暗い場所で写真撮影を行う際、足りない光を補うために使われることの多いストロボですが、屋外撮影でも活躍するのをご存知でしょうか。日中の屋外でストロボを使うテクニックは「日中シンクロ」と呼ばれます。強い逆光で被写体が暗く写ってしまう場合でも、日中シンクロを行うことで被写体を際立たせた印象的な写真に仕上がります。また、被写体に合わせて露出を上げると背景が白飛びする、という困ったシーンにも役立つ便利なテクニックです。今回は日中シンクロの基本的な知識や、具体的な設定方法について詳しく解説します。
#1 屋外撮影で活躍する日中シンクロの基本と作例
屋外撮影でぜひ使いたいテクニックのひとつが日中シンクロです。屋外ポートレート撮影を行うときは特に重宝します。まずは日中シンクロとは何か、基本的な考え方を解説します。
日中シンクロとは?
ひとことで表現すると、「日中の明るい屋外でフラッシュを強制発光させること」です。別名「デーライトシンクロ」とも呼ばれます。十分な光量のある屋外でわざわざストロボを焚くこの技法は、不思議に感じられるかもしれません。しかし、ストロボの光を使って、被写体と背景の明度の差を緩和すると、以下に挙げられるようなシーンで役立ちます。
・逆光や半逆光で被写体が真っ黒に写るシーン
・被写体に露出を合わせると背景が真っ白に写るシーン
・主題の被写体を目立たせる
日中シンクロのテクニックを使うことで、このようなメリットがあります。貴重なシャッターチャンスを無駄にしないためにも、失敗写真はなるべく少なくしたいものです。失敗写真を量産しないよう、この機会に日中シンクロについて学んでみましょう。
日中シンクロを行う理由
写真フィルムや、デジタルカメラのフィルムに当たるCMOSセンサーは、人間の目で見たままの光景を写し取ることができません。肉眼で見ると逆光の屋外でも被写体と背景の明暗差を感じませんが、フィルムやセンサーは人間の目と比べて光と影を見る力が弱いのです。そうしたフィルムやセンサーの弱点を補うために、ストロボで強い光が当たっている場所とそうでない場所の明暗差を人工的に狭める必要があります。
日中シンクロの作例
日中シンクロを行って撮影した写真の作例をご紹介します。
このように逆光の強い屋外ポートレートは、日中シンクロを使用して撮影されています。ストロボを使うだけで、被写体と背景の明暗差を抑え、主題の被写体をより印象的に写し取ることができます。
#2 ハイスピードシンクロとの違いは?必要なものって?
日中シンクロと同じく、明るい屋外でストロボを使用する「ハイスピードシンクロ」というカメラ用語もあります。どちらも日中にストロボを使用するという共通点を持つテクニックで、両者の違いはほとんどありません。
ハイスピードシンクロとは
ハイスピードシンクロは、日中シンクロの一種だと考えてください。シャッターの先幕と後幕がほぼ同時に降りる高速なシャッタースピードで撮影するとき、1回きりのストロボ発光だと不十分なことがあります。
それを補うため、ハイスピードシンクロ対応の外部ストロボやカメラはフラッシュを瞬間的に連続して数回発光させます。すると、コンマ数秒の間に何度もフラッシュが光り、シャッター幕の開いている間はずっと閃光していることになるのです。つまり、シャッタースピードがハイスピードでもストロボをシャッターとシンクロさせるために、ストロボを強制的に高速で数回発光させることがハイスピードシンクロです。
ハイスピードシンクロのメリットとデメリット
ハイスピードシンクロのメリットは、ストロボ同調最高速度を超えるような早いシャッタースピードでも、日中シンクロを行えることです。デメリットとしては、ハイスピードシンクロは通常の日中シンクロより多くのエネルギーを使うため、その分バッテリーが消耗することが挙げられます。また、通常のストロボ発光と比べて光量が落ちることも欠点です。
ハイスピードシンクロに必要なもの
ハイスピードシンクロを行いたい場合は、「スピードライト」と表示のあるクリップオンストロボを購入するか、ハイスピードシンクロ機能付きの内蔵ストロボを備えたカメラを選びましょう。カメラにハイスピードシンクロ機能が備わっているかは、「カメラの機種名 ハイスピードシンクロ」で検索するとすぐに確かめられます。
#3 日中シンクロでストロボとカメラの設定
日中シンクロを行う方法ですが、やり方は非常にシンプルで「ストロボを強制発光させる」これだけです。ここでは、カメラの内蔵ストロボを使う場合の設定と、クリップオンストロボを使って日中シンクロを行うための設定方法をご紹介します。
カメラの内蔵ストロボを使う場合の設定
まずはカメラのストロボマークの付いたボタンを押します。次にデフォルトでは「自動発光」となっている内蔵ストロボの設定項目を、「強制発光」へ変えます。これでカメラの設定は完了です。被写体へカメラのストロボ発光が届く距離から撮影してください。
クリップオンストロボを使う場合の設定
カメラから操作できるタイプのクリップオンストロボの場合、設定方法はカメラの内蔵ストロボを使う場合と同様です。デフォルトで「自動発光」または「オート」となっている設定を「強制発光」へ変更して撮影します。
クリップオンストロボはフラッシュの光量も任意で設定できます。最も一般的で使いやすいオート(TTL)は、撮影シーンに応じた明るさを自動的にストロボが判断し発光します。自分でストロボの発光量を調整したい場合はマニュアルモード(M)へ設定を変更してください。
#4 さらにNDフィルターやディフューザーの使用メリット
NDフィルターやストロボディフューザーを使用することで、写真表現の幅がさらに広がります。それぞれのアクセサリーを導入するメリットには、以下のようなことが挙げられます。
NDフィルターを使用するメリット
NDフィルターは、グレーカラーのレンズフィルターです。レンズに入る光の量を減らす効果があり、写真の発色に影響を与えず光の量を減らすことができます。
通常はスローシャッターで滝を絹糸のように滑らかに写すシーンなど、絞りを開放にしたままシャッタースピードを下げる場面で使用されることの多いフィルターです。
日中シンクロで撮影を行うときのメリットとしては、写真の白飛びを抑えることが挙げられます。ストロボの発光量が多すぎて、写真がどうしても露出オーバーになってしまうときは、NDフィルターでレンズに入る光量を抑制しましょう。
また、背景をぼかすため絞り開放のまま日中シンクロを行う場合にもNDフィルターを使います。レンズに入る光量を抑えるため、露出オーバーになりがちな低いF値でも白飛びを防ぐ効果があります。
ストロボディフューザーを使用するメリット
ストロボディフューザーとは、クリップオンストロボに装着するカメラアクセサリーで、光を拡散させる効果があります。
日中シンクロを行って撮影するときに、ストロボディフューザーを使用するメリットは「被写体へ当たる光を柔らかく均一にすること」です。
屋内撮影の際にストロボを使用して撮影する場合は、バウンスといって壁に向けてストロボを発光させ、被写体へ直接当たる光を柔らかくするテクニックが多用されます。しかし、バウンスに使える壁のない屋外でストロボを使用する場合はそれができません。
バウンス撮影で得られるような柔らかい光の表現を、屋外撮影で再現したい場合はストロボディフューザーを使います。特にポートレート撮影で、人物の顔を柔らかく表現したいシーンでは、ストロボディフューザーが活躍します。もちろん強いフラッシュ光の当たった表現が好ましい場面も存在しますが、ストロボディフューザーを使用するとモデルの顔に柔らかく均一な光を当てられます。
#5 まとめ
今回は日中シンクロについてご紹介しました。屋外ポートレート撮影や、逆光での撮影時に大活躍する便利なテクニックです。この機会に日中シンクロをマスターして、屋外撮影のスキルを向上させましょう。
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