パンフォーカスのテクニックを覚えよう!基本とピント位置を解説

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2019年1月9日

写真の撮り方でいつも話題になるのは、主題や見せたいモノを引き立たせるために背景や主題以外のものをぼかすテクニックです。しかし、反対に主題も背景も全てのものにピントをピッタリあわせて撮りたいときもあります。そのテクニックがパンフォーカスです。ここでは被写界深度との関係を説明しながら、パンフォーカス写真の撮り方を解説します。

#1 パンフォーカスの基本:なぜ遠くまでピントが合うのか

写真① パンフォーカス写真、フルサイズ一眼レフ、焦点距離35mm、f/11

 

写真①は東京お台場公園でのスナップですがパンフォーカスになっています。手前のエサをやる人に群がるカモメを捉えていますが、撮影者はレインボーブリッジの向こうのタワーマンションに住んでいるので、それも鮮明に写したかったのです。写真そのものの良し悪しは別にして、撮影意図はパンフォーカスの写真に生かされています。

 

写真②パンフォーカス例、APS-C一眼レフ、焦点距離60mm、f/11

 

もう一つの例が写真②です。インドの近代的な建築ですが、わずか数メートルの所にいる人から200m先のお寺にピントが合っていて屋根のスジ模様がハッキリ見えます。

では、このようなパンフォーカス写真はどうしたら撮れるでしょうか。その説明の前に、被写界深度を理解する必要がありますので簡単に説明します。被写界深度とはピントが合う範囲のことです。レンズの絞りを絞る(F値を大きくする)と被写界深度が大きくなり、前から後ろまでピントが合います。また、焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)ほど被写界深度は深くなります。このように被写界深度が非常に深く、手前から遠くまですべてにピントがあっている状態をパンフォーカスと言います。

#2 パンフォーカス撮影に必要な設定とレンズ

設定とレンズ

いきなりですが、結論から言えばパンフォーカスの条件は次の三点です。
⦁    短い焦点距離のレンズ(広角レンズなど)
⦁    絞りを絞る(F値を大きく)
⦁    ピント位置をカメラから離す(主題とカメラの距離を長く)

図① 実験方法図

実験方法

しかし、これでは一般的過ぎて、具体的に焦点距離やF値をいくらにすればいいのか分かりません。そこで次のような実験をしました。レンズ焦点距離を24mm, 35mm, 70mm (35mm換算で 36mm, 52mm, 105mm)、フォーカス点をカメラから3m, 6m,10mにして、絞りをf/4~f/16で撮影して、300m先の文字のボケ具合をチェックしました(図①)。使用カメラはニコンD750をAPS-Cとして使用。レンズは 24-70mm(35mm換算で 36-105mm)、f/2.8です。

写真③ 実験場所

直線距離で約300m離れたビルの看板文字でフォーカスの良否を判断。

実験結果

表① 実験結果(OK=良好、NG=不良、黄色=不十分。*印番号は下記の写真番号)
カメラからのフォーカス点

レンズ焦点距離()内は35mm換算

絞り
f/4 f/8 f/11 f/16
3m 24mm (36mm) NG NG*4 不十分*5 OK*6
35mm (52mm) NG NG 不十分 OK
70mm (105mm) NG NG NG 不十分
6m 24mm (36mm) 不十分 OK OK OK
35mm (52mm) 不十分*7 OK OK*8 OK
70mm (105mm) NG NG NG 不十分
10m 24mm (36mm) OK OK OK OK
35mm (52mm) 不十分 OK OK OK
70mm (105mm) NG 不十分*11 不十分 OK*12

 

実験結果は表①の通り、結論としてパンフォーカスの条件は下記の通りと言えます。

⦁    レンズ焦点距離は24~35mm(35 mm換算で36~52mm)。但し両者の差は少ない。
⦁     絞りはf/8~f/16(f/22は光の回折現象による画像劣化があるので避けたい)。
⦁    ピント位置(主題が手前にある場合)はカメラから5~6m以上離す。

 

では、実際の画像を見てみましょう。なお、表中の*印の番号と写真番号は同一です。
まず、ピント位置がカメラから3mの場合です。レンズ焦点距離24mm(35mm換算36mm)ではフォーカス点が近すぎるためf/8~f/11ではピントが合っていません(写真④⑤)。f/16になるとピントが合い、パンフォーカスとなっています(写真⑥)。

次にピント位置がカメラから6mの場合です。絞りf/4ではピントが合っていません(写真⑦)、がf/11にすると合っています(写真⑧)。しかし、同じf/11でも70mmのレンズではピンボケとなっています(写真⑨)。

最後にピント位置がカメラから10mの場合です。パンフォーカスから言えば、かなり楽になりますが、24mmレンズでもf/4ではパンフォーカスになっていません(写真n⑩)。しかし、f/8~f/16になれば70mmレンズでもなんとかパンフォーカスになっています(写真⑪⑫)。

#3 ピント位置のやり方

図② 実験2(無限大ピントでの撮影)

 

前述の実験結果からパンフォーカスが得られるF値やレンズの焦点距離はほぼわかりました。フォーカス点(カメラからのピント位置までの距離)が遠い(長い)ほうが有利ということも分かりました。ではピントを無限大にして撮ればいいのかといえば、そうではありません。ある条件では手前がボケる可能性がありますので、主題とカメラの距離をとってやる必要があります。しかしカメラから離れすぎると主題が小さく写ってしまうので、一応はその距離は押さえておく必要があります。

そこで別の実験をしました。写真⑩のように、カメラから6m、10m離れたところに距離を示す数字入りの目印看板を立て、無限大のフォーカスで撮影した場合にどの距離ならピントがあうかをチェックしました。

 

写真⑬ 無限大ピントでの撮影    

 

結果、ピントを無限大にした場合、カメラから6m離れた場所もピントが合うのは70mmレンズでf/11~f/16でした(写真⑬)。このことから言えるのは、24~35mmの広角レンズを使ってf/11以上で撮れば5~6m手前の主題もパンフォーカスになります。主題の人物と背景をパンフォーカスで撮影する場合の目安になります。

 

写真⑭ f/8では6mがピンぼけ

 

写真⑮ f/11~16で両方ともピント合う

#4 その他の注意事項

パンフォーカスは広角レンズで絞りを絞るのが基本ですが、絞り過ぎると(例えばf/22)などでは光の回析現象のために画質が落ちます。同様にレンズの焦点距離も目いっぱいの広角側では周辺画質が落ちたり、画面の角にケラレが出ます(プロ用の数十万するレンズは別ですが)。したがって、F値も広角も目いっぱいは避けた方が無難です。

以上説明した条件に加えて、撮像素子(イメージサークル)が小さいカメラがパンフォーカスには有利です。つまり、フルサイズよりAPS-Cや、もっと小さなコンパクトカメラやiPhoneなどが有利です。これは少々意外と思われるかもしれませんが事実です。確かにiPhoneで撮った写真はパンフォーカスが多くピンボケはほとんど見られませんね。

#5 まとめ

高級一眼レフと明るいレンズ(F値が2.8や3.5のレンズ)を買って撮り始めた初心者は、ピンボケ写真などの失敗をすることがあります。iPhoneで撮った友達の写真のほうがよく見えて、がっかりすることもあります。一眼レフはiPhoneやコンパクトデジカメではできないことができる代わりに、基本を知らないと「生兵法ケガのもと」となります。一眼レフでは背景をボカしたり、パンフォーカスしたり自在にできますが、ここで解説したことを頭に入れて撮影したらレベルUPは間違いありません。

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