魚眼レンズってどういう仕組み?レンズの特徴と使い方

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2018年12月23日

皆さんは魚眼レンズを使って撮影されたことがありますでしょうか。通常の撮影で超広角レンズを使う時といえば、よほど狭い場所で全体を撮影する時や広い景色を一枚に収めたい時くらいであまり使うことがなく、ましてや魚眼レンズを使うことはほとんどないと思います。従って利用頻度の少ないレンズにはなかなか経費をかけられないというのが実情で魚眼レンズを持っておられるユーザーはわずかではないかと思います。しかし、これまでにない世界を表現するにはとっておきのレンズの一つであることも事実で、今回は特殊なレンズの一つである魚眼レンズについて特徴や使い方をご紹介したいと思います。

#1 魚眼レンズの原理:構造を紹介

魚眼レンズは簡単に言えば広角レンズを限界に近いくらいまで広角にしたレンズだと考えればわかりやすいと思います。ただ、通常の広角レンズは歪み補正等により映像の端でも湾曲することが少なくなるように設計されていますが、魚眼レンズは湾曲を補正せずそのまま映し出すようにしたものです。魚眼レンズには全周魚眼と対角線魚眼とがありますが、市販されている魚眼レンズの多くは対角線魚眼です。ここではこの二つの魚眼レンズの構造についてご紹介します。

魚眼レンズの原理

魚眼レンズは焦点距離が短く約180度の広い範囲を撮影することができる超広角なレンズです。名前の由来は水中から上空を見上げた時に水の屈折で空がゆがんで見える魚目線の見え方からきています。約180度という範囲を一枚の写真に収めるため写真の周辺は映像がゆがみ「樽型収差」といわれる歪曲が現れ独特の画像になります。(図1)

 

円周魚眼とは?

円周魚眼とはイメージセンサー(撮像素子)上に円状のイメージサークルをそのまま写し出す方法です。従ってカメラのイメージセンサーは長方形ですから長方形の枠内にイメージサークルができサークル外は真っ暗となります。上下左右及び対角線ともに180°写り、それ以外の部分(黒い部分)は何も写っていない写真となります。(図2)

 

対角線魚眼とは

イメージセンサーの対角線の部分だけ180°となるように映し出す方法で、上下左右は画像が削られます。つまり円周魚眼のイメージサークルを対角線ギリギリでイメージセンサーのサイズに切り取った写真となり、黒く映像の写っていない部分は存在しません。(図3)

#2 広角レンズとの違いは?

 

魚眼レンズはあくまで超広角の範囲をそのまま映し出そうとするので、映像の周辺はゆがみ「樽型収差」といわれる歪曲が現れます。しかしそのまま映し出しているため中心部分に映し出される被写体と周辺部分に映し出される被写体の大きさの比率が実際に見た比率に近い映像となります。(図4)

 

 

広角レンズの場合はイメージセンサーの枠内に歪曲なく映像を投影するためにたくさんのレンズで歪みを補正し、中心部分でも周辺部分でも被写体が見た目に近い映像を投影するように設計されています。しかし、歪みを補正する影響で中心部分の被写体と周辺部分の被写体とでは大きさの比率がずいぶん違う映像となります。(図5)

このように魚眼と広角では出来上がりがずいぶん違いますが、それぞれに良さもあり撮影者の意図に合わせて活用されています。一般的には見た目に近い歪曲のない写真が好まれるため広角レンズが多く使われています。しかし逆に魚眼レンズであえて歪曲を生かして撮影された写真は撮影者の思いを表現しやすくインパクトのある面白い写真が出来上がり使ってみる価値のあるレンズといえます。

#3 魚眼レンズの特徴を使いこなそう!撮影に大事な6つのポイント

これまで述べたように魚眼レンズも使い方によってはとても印象的な表現ができます。そこで、魚眼レンズを使う場合のポイントを6つ紹介したいと思います。


1)大きさ・広さ・存在感を強調したい時に活用する

まずは魚眼レンズをどのようなときに使うかということですが、魚眼レンズは被写体を強調する効果がありますので、被写体の巨大さ、空間の広さ、存在感を強調したいときに使うと意図を効果的に表現できます。(図6)

 

2)左右対称の被写体を撮影するときに活用する

左右対称の被写体を魚眼レンズで撮影すると違和感のないとても印象深い写真となります。逆に左右対称でない被写体の場合は違和感が出やすく、魚眼レンズで撮っただけという印象の写真になってしまいます。(図7)

3)水平・垂直を意識して撮影する

左右対称の被写体であれ存在感を伝えたい被写体であれ、ただ魚眼レンズで取ればいいというものではなく構図がとても重要になります。特に注意したいことは、水平・垂直を意識して撮影することです。特に中心部分の縦状の被写体は垂直の線が描ける構図、地平線等の横状の被写体や左右対称の被写体の水平が保たれている構図を意識すると違和感のない写真となります。(図7)

 

4)主役を見つけて強調した撮影をする

広さ・大きさを強調したい場合で水平・垂直を意識して撮影しても何かパッとしない作品になることがあります。それは被写体の中にポイントとなる主役的なものがないためです。そこで、被写体の中に特徴的なものを見つけ、それを強調して撮影するとインパクトのある写真となります。(図8)

5)構図を意識して撮影する

魚眼レンズによる撮影でも写真構図を意識するのとしないのとでは随分と出来上がりが違ってきます。日の丸構図や対象構図、三分割構図を意識して撮影すると、インパクトがありながら違和感をあまり感じない作品が出来上がります。(図8)

 

6)曲線(円・弧)を意識して撮影する

直線ばかりでできている被写体を撮影するときに魚眼レンズを使うと、何となく違和感を感じる作品となりやすい傾向があります。(あえて直線を曲げて違和感を効果として使う方法もあります。)
ところが、曲線のある被写体を撮影する場合に魚眼レンズを使うと、曲線が強調されてインパクトがある中に違和感を感じにくい作品を作ることができます。

#4 まとめ

今回は魚眼レンズの仕組みや使い方についてご紹介しました。魚眼レンズは通常の広角や望遠等のレンズと違い使いにくく利用頻度が少ないハイコストのレンズという印象があるかも分かりません。しかし、今回ご紹介したポイント等を意識して撮影してみるとこれまでにない面白い写真が撮影でき、新しい領域で自己主張できる作品を作り上げることができます。機会があれば是非挑戦してみてください。

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